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寺島 それはもう。初めて脚本を直接いただいた時から…。
若松 私が手直しした脚本をお渡ししたんですよ。最初の段階からいろいろ鉛筆で書き込んで、手を加えた脚本をそのまま。印刷し直すのはもったいないですから(笑)。
寺島 そのたくさんの書き込みがある脚本を読んで、この作品に対する監督のお気持ちが分かる気がしました。
寺島 監督は、俳優の状態を本当によく見ていてくださるんですよ。俳優が本当に集中できている時を見極めて、その状態をとらえて撮影をスタートさせる。だから最高の演技を、しかも時間をかけずに撮ることができるんです。最近の映画では、撮影した後で映像を加工できる技術が進んでいますから、例え俳優が50パーセントの力しか出していなくても、それを100パーセントの演技に見せることはできるんですよ。それに、何度もリハーサルを繰り返していると、その中で俳優というのは力を加減できる。ペース配分が自分でできてしまうものなんです。でも若松監督との撮影では、そういうものが必要ではありません。自然に集中できるので、いつも俳優は感情の鮮度が100パーセントで演技ができるんです。
若松 俳優さんばかりではありません。私が監督する映画を作るために集まってくれるスタッフたちも、いつも本当に集中してくれていますよ。カメラや照明、美術、そのほかかかわるすべての人たちが。だから、いい映画を、無駄な時間や予算を費やすことなく、作ることができる。それは撮影に協力してくださった、新潟県の皆さんも同じです。本当に感謝しています。感謝といえば、寺島さんには、この作品の撮影では、随分無理なお願いもしました。メークや衣装のスタッフもつけることはできないので、準備も全部ご自身でお願いしたんです。それであれだけ、皮膚感を感じさせる演技をやってくださった…。
寺島 監督だって、すべてご自分でおやりになっているんですから。撮影の段取りに始まって、その日の撮影が終わると、監督ご自身が私たちを宿舎まで、車で送ってくださるんですよ。普通の監督なら、アシスタントに任せてしまうことも、すべてご自身でおやりになる。その上、出演者やスタッフの状態も、本当によく見ていてくださるんですから、俳優が集中しないわけにはいきません。
若松 とにかくこの映画は、寺島しのぶさん抜きには考えることができません。今の日本で、ということは世界でということでもあるのですが、これほど「もんぺ」が似合う女優さんはいないと、私は思っていますから(笑)。
寺島 自分でも、そう思います(笑)。
独特の視点で問題作を発表し続ける若松孝二監督が、戦争の愚かさと悲しみを描いた反戦ドラマ。第二次世界大戦に出征した久蔵は、四肢を失い、顔面が焼けただれた無残な姿で故郷の村へと戻る。首に勲章を提げられ、「生ける軍神」としてあがめられる久蔵。妻のシゲ子は、戸惑いながらも軍神の妻として自らを奮い立たせ、夫に尽くすが…。
製作・監督:若松孝二
出演:寺島しのぶ、大西信満、吉澤健、粕谷佳五、増田恵美、河原さぶ、ARATA、篠原勝之ほか
配給:若松プロダクション/スコーレ株式会社
公式HP:http://www.wakamatsukoji.org
©若松プロダクション